半高山周辺の段々畑
玉東町南部に位置する原倉は、玉東町の基幹産業である農業を支えるエリアであり、日本の近代化に向け、地方自治から中央集権に舵を切る歴史的な転換点となった西南戦争の舞台でもあります。
430ヘクタールにわたり、金鋒山三ノ岳の傾斜を利用し整備された段々畑では、温州みかんをメインに梨やスイカなどの果物が栽培され、高低差がある地形の地形のため気候条件が揃えば雲海が広がり、幻想的な風景を見ることができます。
昭和5年に行われた山林開墾以降、代々受け継がれる原倉の段々畑は、地域の人々の営みを物語り、今も活用される産業文化遺産です。
広大な山野を農地に変えた先人の開拓者精神と玉東町の歴史が感じられ、昔ながらの面影と国内最後の内戦である西南戦争の舞台となった側面もある畑の風景です。自然だけに着目するだけでなく、日本の近代化の歴史や地域住民の暮らしなど様々な顔をもちます。
いまも玉東町の名産品であるみかんの生産を支え、周辺一帯は近年では国から文化財の指定も受けています。文化財を活かし、ガイドを務める地元のボランティアにより、フットパスのルートが考案され、訪れる観光客も多いです。
歴史・文化・産業などの要素が一体となり、様々な分野の主体が協働・連携することにより、景観を守り、後世に伝える取り組みが行われています。

フットパスの様子

原倉周辺の段々畑

8月のみかん畑

積み上げられた石垣
第32回くまもと景観賞で奨励賞受賞
くまもと景観賞は、私たちの郷土=熊本が緑と潤いに満ちた美しい県土となるよう、良好な景観形式に大きく貢献している人々の功績を広く顕彰することを目的とし、毎年募集されています。
「半高山周辺の段々畑」は令和3年3月17日に第32回くまもと景観賞にて奨励賞を受賞しました。
受賞した際に審査委員の方から、次のように講評いただきました。
「半高山への峠道を進む車窓からは、町の特産であるミカン等が栽培される美しい段々畑を望むことができる。これらが広がる玉東町原倉地区は、西南戦争の舞台ともなった歴史ある地域である。時を経て、昭和5年頃から、住民自ら山林を開墾し、地域で採取した石を積み段々畑を築き、これが町の基幹産業である農業の礎となった。
先人の偉業が、農業という生産を通じて維持、保全され、現在も良好な景観を創出している点が高い評価を得た。美しい景観の維持と、人々の活力ある生活が表裏一体であることを再認識できる場所である。
現在、同地区ではフットパスコースの設置の他、若手農家「玉東町段々畑男子=ぎょくだん」による農産物の地域ブランド化が推進されている。若手の台頭も加わり、地域の手に守られる温かみのある情景の創出が、継続可能な地域づくりに大きく貢献していくことであろう。」(審査委員 丸山 幸 様)
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